7. 脱サラの葛藤と、妻への呵責
とにかく、やるしかないと妻も理解してくれ、二人三脚で食事療法が始りました。
食事療法の基本に従い、すべて口から入れる食べ物は、計りで計量することにしました。
しかし、そのことを先生に相談したら、クレアチニン値2.7前後では仕事を休んで療養する段階にはないので、診断書が出せないと言うのです。
診断書がなければ、休んでいる間の休業補償、つまり、傷病手当金が支給されませんので、妻にはとても苦労をかけました。
さて、半年間の自宅療養期間が過ぎて、会社(職場)に復職する段階になりました時、私のその後の人生を転換させるキッカケが訪れました。
それは、毎月必ず出かけていた東京の大学病院で、いつものとおり、主治医(平田先生)と私の病気の今後のことについて話をしていましたら、先生が突然に、齋藤さん、あなたは今まで自分の身体を酷使し続け、仕事第一の生活だったでしょうと切り出しました。
続いて、これから長生きしたいと思うなら、仕事も大事だが、透析を第一に据えた生活設計を考えないとダメですよとおっしゃいました。
そして、先生は、具体的に、これからは、あなたのような腎臓病の方が激増するので、あなた自身の病気体験が活かせる仕事も考えられるでしょうと具体的にアドバイスしてくれました。(その後、約23年経過しましたが、日本は、慢性腎臓病予備軍が2000万人と推定される大変な時代を迎え、まさに、先生が言われたことが起きています)
そう言われれば、妻が、毎日の食事療法の献立を考える時、いつも苦労していたのが、たんぱく質を制限する中で、いかに、エネルギーを確保する料理が作れるかということでした。
その頃、大学病院の腎臓内科の栄養指導では、エネルギーを高める素材として、「粉あめ」なるものが食事療法用食品として売店にて販売されていましたが、その他にも、塩分を制限した減塩しょうゆや減塩みそなどもありました。
私は、そこでやっと平田先生がおっしゃったことが理解でき、これからは、きっと、多くの腎臓病患者さんが食事療法のために必要ないろいろな食品が開発される時代になることを予想するとともに、そうだ、自分の体験と合わせて、これらの専門食品を販売する店を始めようと決心し、妻に切り出しました。
ある時突然、会社を辞めてゼロからの出発で店を始めると言い出した私に妻はこう言いました。
私は、サラリーマンの妻としてあなたと一緒になったのに、突然に自営(店)の仕事を始めるとは勝手が違うと言い出しました。
その時、私は、自分が病気になったばかりに、毎日の食事療法に苦労をかけ、さらに、店の仕事にも巻き込むことに大きな呵責の念を覚えましたが、私が、透析して長生きするためにも、この道の選択しかないと心に決めて妻を説得しました。
妻は、最後に折れてくれました。
あなたがそうするならついてゆくわと‥‥。
それからどれほど経ったことでしょう。
今でも、透析とC型肝炎をもつ夫に食事療法の世話をし続け、なおかつ、自営の店の切り盛り(資金繰りや経理等)とどれほど、妻には苦労をかけ続けているか、返す言葉もありません。
おそらく、並みの女性なら、とっくに、離婚となるでしょう。
(ちなみに、夫が、糖尿病と分かった途端に離婚を切り出す主婦もいるといいますから‥‥。
こう言いながらも、私と妻は、今日も、腎臓病で悩む多くの相談者に向きあいながら、スタッフにも助けられ自営の店の仕事に勢を出しています。
| 慢性腎臓病TOP | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 8 | 9 |
| 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
| 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
メール、お電話(0544-29-6090) 、FAX(0544-23-9339)にてお願いします。





